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もちろん、他方では、まだまだ、味よりも腹一杯の米を食べたい貧しい人々も少くない。その意味では、従来通りの高収量品種としての改良を続ける努力も放棄してはなるまい。
ダビッド・大塚論文で提示された政治的含意として興味あるのは、要素や生産物の市場調整があれば、劣悪環境地域が直接緑の革命の恩恵に治せなくても、その地域のマイナス効果が緩和されるので、非効率な劣悪環境地向けの米技術開発努力に疑問を示している点である。しかし、なお緑の革命の効果を期待する地域に対しては、灌漑投資と米品種開発投資の何れがより経済効果があるかの選択をすべきである主張する。何れの方向の投資も高コストとなろうが、これからも、地球規模でのマルサス的危機を回避するためには、緑の革命の教訓を生かし、先進国・途上国が力を合せて有効な国際協力の可能性を模索し続けるべきであろう。

 

 

1. ただし、世界には貧困問題と強く結び着いた飢餓人口が依然多数存在することを否定しない。
2. 田中明「グリーン・レボリューションと私」、『グリーンレボリューションの20年』、日本大学農獣医学部国際地域研究所、1987年、22−25頁。
3. 田中、1987,24−28頁。
4. 速水佑次郎は、この過程を、「緑の革命とは1個の「奇蹟の米」を開発することによって終るものではなく、生物的な生産過程に科学を応用し、不断の改良を続けるプロセスであることを示しており、それは正に科学的農業の本質である」と述べている。速水、『開発経済学』創文社、1995年、91頁。
5. 山田三郎『アジア農業発展の比較研究』東京大学出版会、1992年、267−270頁。
6. ボスラップ(Ester.Boserup)『農業成長の諸条件、人口圧力による農業経済変化の経済学』、安沢秀一・安沢みね共訳、ミネルヴァ書房、(原著は1965)、1975年。

 

 

 

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